整形外科の初診室の前で、雑誌を読みながら順番を待っていた。
待合室は、呼ばれるのを待つ人で窮屈に感じた。
診察室の方から看護士が出てきて、吉澤さんって呼ぶ。
「はい、私です。」
「この番号札を持っていてください。番号を呼ばれたら、部屋の中に入り
椅子に座っていてください。」
「わかりました。」
それからは、番号を呼ばれた人が順番に中に入っていくのを眺めていた。
やがて、番号が呼ばれ診察室に入ると、看護士に手荷物を置くように言われた。
そして、診察医の前に座ろうとするなり、肩ですかって声をかけられた。
まだ、座ってもいないのにと、少し診察医の印象が悪く感じられ、その人の顔をじっと見た。
若いな。もしかしてまだ学生で研修をしているのではないかと想像してしまった。
話の聞き方も横柄さがあったし、それより禄に人の話を聴いていない。
「では、MR検査の予約をしたらどうですか。細かく調べるにはそれが一番です。今日はレントゲンも撮りましょう。」
何でもいい、もうここから出たいという気持ちだったので、お願いしますと一言だけ返した。
診察医は、その答えを聞くともう終わったとばかり、こちらのことは無視するように看護士に話しかけていた。
「マスクして、風邪か。大丈夫?」
「そうなんですよ。あまり声がでないんですよ。」
「気をつけないとだめじゃないか。」
まだ患者がその部屋から出ていなかったのに、馴れ馴れしくじゃれている。
やらしいヤツだと思った。
部屋から出ると、他の看護士が追いかけてきて、レントゲン撮影の説明を始めた。
大きな建物の病院は、どこへ行けばいいのか勘ではわからない。
どこの階段を使ってとか何番の窓口だとか診察券だけ出してくださいとか、説明は細かかった。
そんなに覚えられるかなと心配になったとき、彼女が現れた。
「診察は終わったのですか。」
「終わったよ。これからレントゲンだって。」
「それは、こっちですよ。」
彼女には、看護士よりも看護士らしい優しさが感じられた。
(この物語はフィクションです。)
[0回]
PR