次回の診察の予約を入れて、会計の窓口前に立った。
でも、何だか普通ではない。
「この機械に診察券を通してください。」と彼女が教えてくれた。
診察券を通すとそのまま後ろに下がってしまった僕に、番号札も取るんですよって注意してくれた。
会計を済ますのに、3つの窓口を通らないとならないことを知った。
合理的と言えばそうだが、慣れないと困った姿をさらけ出すことになりかねない。
でも、今日は心強い案内人がいる。何も困ったことにはならなかった。
僕が支払いを終えたすぐ後に、彼女も支払いを終えた。
暖かい陽気が続いていたけれど、この日の気温はなかなか上がってこなかった。
病院を出ると、空気の冷たさをすぐに感じた。
まだお昼前の通りは歩く人はまばらで寂しさえ感じた。
「時間があるならカフェにでも入りますか。」と僕は言った。
このまま帰すことなんてできるはずがない。そんな気持ちだった。
お昼には早いし、何よりもその病院の周辺の知識がなかった。
「お昼ご飯にしましょうよ。」と逆に提案された。
「少し早いけど、それがいいね。」と答えた僕は、ご馳走できればお礼にもなるって思ったからだった。
「何がいいですか。」
「そうだなぁ。何でもいいんだけど。」とありきたりの冴えない答えをしてしまった。
知っている場所ならお店の提案もできるだろうけど、ここではさっぱりわからないし、
まさかラーメンというわけにもいかないだろう。
はっきりした答えが出ない様子に、彼女が言った。
「では、私の気に入っているお店に行っても良いですか。」
悪いわけがない。それが一番ではないか。
「もちろんだよ。」
「でも、開店時間になっているかわかりません。」
大抵11時にもなれば、開店しているはずだと思った。
「行ってみようよ。」
二人は、お昼前の人気のない通りを並んで歩いた。
(この物語はフィクションです。)
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