男と女が二人だけになってしまったとき、どんなことを考えるのだろうか。
相手は何を感じているのだろうか。
そんなことを瞬間思ったけど、何かが起こりそうな気配はまったくなかった。
展示室はいくつもあったけれど、見学に入ったのはひとつの部屋だけになった。
そもそも時間潰しに入場しただけだったから、せっかく来たのにとは考えなかった。
また来ることもあるだろうしぐらいにしか思わなかった。
「そろそろ時間ですね。」
そう言われて腕時計を見ると、12時を過ぎていた。
もしかすると、今度は満席になってしまっているのではと心配になった。
博物館は急いで出たけど特に急ぐこともなく、彼女のペースで歩き始めた。
店までの時間はほとんど感じなかった。
店に着き店内の様子を見ると、客席の半分ほどが埋まっていた。
お好きな席にどうぞと案内されたので、窓際を選んだ。
話しやすい場所がいいはずだと直感したからだ。
その店はフランス料理の店だった。
お昼にかけられる時間が少ないから、こういう店でのランチすることはあまりない。
それでも彼女のお気に入りの店が、この店で良かったと思った。
今日は特に予定はないから時間をかけても大丈夫だし、こじんまりとしているけれど、
落ち着いた雰囲気が気に入った。
たくさん話をしたかったので、混まないといいのにと思った。
メニューはコースになっていて、オードブルから一品を選ぶことから食事が進み始めた。
僕は魚を主に、彼女は肉を主にしたメニューを選んだ。
メニューの選ぶとき、同じにするか好きな物を選ぶか、少し緊張した。
これは彼女といたからではない。
誰と一緒だって、少なからずそんな気持ちになる。
二人の会話の呼吸はよく合うのか、妙な間が空いたりすることもなく、いきなり始まった。
(この物語はフィクションです。)
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