レントゲンの受付けに診察券を出しながら、彼女を見た。
彼女は、僕のためにシートを押さえていてくれた。
一つ一つ先を読んだ動きに感心する。
シートに腰かけている小柄な彼女に可愛さを覚えた。
そこでの待ち時間はすぐに過ぎて、診療放射線技師が呼ぶ部屋に入った。
部屋に入る前に振り返って彼女を見ると、物憂い表情の中に無言で待ってますからと言っているようだった。
レントゲン室は広かった。
「上半身だけ裸になってください。」と指示される。
最近はシャツを着ているぐらい普通ではないかなどと、余計なことを思った。
言われたとおり裸になると人前でそんな姿になることは非日常なので、どことなく照れた。
レントゲン板の前で、細かい指示をされる。
どっちを向けとか腕はこうだとかなかなか定まらないのがもどかしかった。
技師が肌に触れてくると緊張してしまい、正面を向くことができなかった。
10枚も撮っただろうか。そんなに撮られるなんて、大学病院ってこんなところかと改めて考えた。
「服を着ていいですよ。これで終わりです。」
やっと診察が全部終わった。
部屋を出ると、じっと待っていた彼女がすぐに目に入った。
「終わったよ。次は会計だよね。」と言いながら歩き出した。
でも、彼女がついてこない。
「どうしたの。」
「ええ、あのおばあちゃんが、椅子にかばんを忘れているので心配になって。」
すると、慌てた様子のおばあちゃんが戻ってきた。
「もう、大丈夫です。」
彼女の気遣いは根っからのものなのかと思った。
(この物語はフィクションです。)
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