帰り間際に初体験なんですけどって切りだされた。
やっと解散できると思ってほっとしていたのに。
「歌っていきませんか。こんなことで誘ったのは初めてです。」
男二人でカラオケかいっ。
本当にこの人は帰りたがらないヤツだ。
人のことなんて、いつもおかまいなしだ。
それなら、時々一人カラオケしている店が吉祥寺にあるから、そこへ行こうと
都中下車してつきあってあげた。
カラオケは嫌いじゃないけど、最近、歌をのんびり聴いたり、覚えたりすることがないから
どことなく、手持ち無沙汰になる。
一人なら、何を気にすることもなく、BGMをただかけていたりできるのにね。
彼は何か辛いことでも慰めるような歌を、次から次へと入れた。
どの歌の歌詞も、心をいたわるようなものばかりだった。
1時間の予定が2時間を超え、最終電車もなくなってしまった。
飲んだ後には歌いたくない。
喉の負担が大きいから。
最後は眠かったし、話し掛けられてもうなづいているだけだった。
別れ際、
「今日の曲はどれもいい曲だったね。明日、リストにして頂戴。覚えるから。」と言った。
そんな歌を思いっきり歌いたいときは、僕にもありそうだったから。
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